【米国株】サウジアラムコ Saudi Arabian Oil Company ~ 石油最大手メジャーはどんな会社?

はい、ポンコツです。サウジアラビアに駐在しているポンコツ含めて、この国の駐在員でSaudi Arabian Oil Company 略して(?)サウジアラムコを知らない人はいないです。最近では、ミサイルが油田に飛んできたり、OPEC(石油輸出国機構)で生産調整でいろんなニュースで見ていると思います。

参照元:ロイター記事 https://jp.reuters.com/article/yemen-security-saudi-idJPKCN2LM27L

また世界最大級の石油会社ということもあって、直近の油価高騰を受けて以下のような記事が紙面を騒がせたことも記憶に新しいですね。

サウジアラムコ利益倍増13兆円 原油高騰、投資も拡大
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが20日発表した2021年12月期決算は原油高を背景に純利益が前の期の2.2倍となった。ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー価格が高騰する一方、気候変動問題への対応から欧米の民間石油会社は化石燃料事業からの撤退を進めている。アラムコは石油・ガス部門への投資を拡大し、生産能力を拡大する。

アラムコの純利益は1100億ドル(約13兆円)と、20年12月期の490億ドルの2倍以上にふくらんだ。19年の新規株式公開(IPO)時に表明した750億ドルの配当の支払いも継続した。

参照元:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR201JT0Q2A320C2000000/

今回はそんなサウジアラムコについて紹介したいと思います。

■今回の記事で分かること
・サウジアラムコってどんな会社なの?
・2021年度の決算は?

目次

・サウジアラムコってどんな会社なの?

サウジアラビアにおける石油の歴史

中東にははるか昔から石油の出る場所はありましたが、20世紀初頭まではほとんど注目されることはありませんでした。当初、アメリカを中心として行われていた石油の採掘でしたが、これを嫌う西欧諸国が世界各国で石油を探し始めたのです。そして1920年代に入ると中東に膨大な石油が眠っていることが判明したのです。

サウジアラビアで石油ブームに火が付いたのは割と遅く、1930年代後半に東部州のダンマームにて油田が発見されたのがキッカケでした。しかし、1950年に至るまで、欧米を中心とする国際石油資本、とりわけ7大メジャーズ(エクソン、モービル、ロイヤル・ダッチ、BP等)といわれる大手石油会社に付与された包括的利権契約に基づくものが主流を占めており、包括的利権は産油国が未成熟な段階で付与される形となったのです。

この結果、サウジアラビアは7大メジャーによって開発された油田に対して、そのわずかな利権料とそこから得られるわずかな税金しか恩恵がなく、産油国政府の意志が操業に介入する余地をほとんど与えられませんでした。

1960年にメジャーに対抗して産油諸国の石油収入の維持、増大を目的とするOPECが設立され、これを契機に産油国で石油会社を国有化する動きが進んだのでした。しかし、サウジアラビアは動きが遅く、国有化対策が遅れたのでした。きたる1988年にサウジアラビア政府は旧アラムコの操業権利・資産などを引き継ぎ、国営石油会社「Saudi Arabian Oil Company」(サウジアラムコ)を設立したのでした。

サウジアラムコとは?

ウェブサイトから拝借した言葉を使うと「世界をリードする総合エネルギー・化学企業」です。エネルギーや化学品は、世界の商取引を活性化し豊かな生活の向上に寄与するということです。

サウジアラムコはどんなことをしているかというと、石油事業を大きく分けると「アップストリーム事業」と「ダウンストリーム事業」の二つに区分することが出来ます。

なんですか、アップストリーム、ダウンストリームって?

石油・天然ガス産業では、探鉱・開発・生産フェーズをアップストリーム(上流)事業、また生産した石油・天然ガスの輸送を中流、加工(石油製品)・供給までをダウンストリーム(下流事業)と呼んでいます。なんとなくイメージではできるかと思います。

世界で脱炭素の流れが加速するなか、欧米メジャーは下流部門もふくめた石油関連事業の売却や整理に動いています。他方で、アラムコは2020年に石油化学大手サウジアラビア基礎産業公社(SABIC)の買収手続きを終え、石油の上流から下流まで支配する統合企業としての進化を目指しています。

日本でも石油メジャーは複数ありますが、例えばコスモ石油は下流事業に力を入れていたり、アブダビ石油は上流での石油生産等に力を入れていたり、企業ごとで力を入れるセクターが違っていたりします。私も学生の時は石油会社から内定をもらいましたが、当時は先輩社員から「斜陽産業だからやめておけ」と言われ、当時はこんなに油価が復活するとは思いもしませんでした。

とにもかくにもアラムコは石油の上流から下流まで支配する統合企業として世界に君臨しています。

世界から見たサウジアラムコとは?

本国における原油の輸入先(2019年度)は以下の通りになっており、なんとサウジアラビア (≒サウジアラムコ)と関係が非常に強いことが分かります。アラブ首長国連邦にはアブダビ国営石油(Abu Dhabi National Oil Company = 通常 ADNOC)と呼ばれる石油大手がありますね、カタールはQatar Energy (旧 Qatar Petroleum)と中東諸国に頼っている部分が大きいです。

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出典:
経済産業省「資源・エネルギー統計年報」

2020年度の大手メジャーも含めてランキング形式にすると、産出量は以下の通りです。
サウジアラムコが圧倒的な産出量・埋蔵量ということが分かると思います。世界最大手石油会社たる所以となっていますね。

  1. サウジアラムコ 3,371 万バレル
  2. アブダビ国営石油 1,380 万バレル
  3. イラン国営石油 1,099万バレル
  4. PetroChina 922万バレル
  5. Exxon Mobil 857万バレル

・2021年度の決算は?

2021年度の決算情報

2021年度の決算は以下の通りです。油価が100 US$を超えて回復してきているので、恐ろしいことになっています。ポイントは以下です。トヨタの純利益が約2.3兆円であることから、アラムコがモンスター企業かということが分かると思います。

・売上高:約48兆円
・営業利益:約25兆円
・純利益:約13兆円
・フリーキャッシュフロー:約13兆円
・設備投資:約3.8兆円

国際通貨基金(IMF)の試算では、2020年の各国の財政均衡に必要な石油価格の損益分岐点はサウジアラビア83.6ドル、アラブ首長国連邦(UAE)70ドル、オマーン87.6ドルなどとなっています。

これはあくまでもサウジアラビアの国家財政均衡に必要な損益分岐点となっており、Forbesの記事からもサウジアラムコの企業としての損益分岐点は40$前後と推察することが出来ます。油価が40$以上であれば、一応ビジネスとしては黒字となるようです。

なので2022年度も引き続きは好業績が見込めそうです。

Net income in 2016 was only $13 billion, and free cash flow a mere $2 billion. Contrast that with the $111 billion in income and $86 billion in free cash flow the company made in 2018 (when Brent crude averaged $71.34/bbl), and it looks like Aramco’s breakeven price is just about $40/bbl.

Saudi Aramco’s Breakeven Oil Price Is Higher Than Expected https://www.forbes.com/sites/rrapier/2019/04/01/saudi-aramcos-breakeven-oil-price-is-higher-than-expected/?sh=4008135d1c02

サウジアラムコの将来的な方向性

CEOのAmin H. Nasserは以下の通りに、近年・今後のビジネスにコメントをしています。

CEOのアミン・ナセル氏は「経済条件は大きく改善したが、先行きはマクロ経済の状況や地政学要因で不透明だ。エネルギー安全保障は世界の数十億人の人々にとって最重要な課題であり、われわれは石油やガスの生産能力を拡大する」と説明した。

アラムコは同日、石油の生産能力を27年までに現状の日量1200万バレルから同1300万バレルへ引き上げることを柱とする成長戦略もあわせて発表した。30年までに天然ガスの生産を50%以上引き上げる可能性にも言及した。水素の主要な輸出プレーヤーとなることをめざし、水素事業に伴う二酸化炭素(CO2)を回収・貯留する「CCS」技術の分野で世界のリーダーになるという。

21年の設備投資は前年より18%増の319億ドル。アラムコは22年にこれを400億~500億ドル程度まで拡大する見込みで、その先もさらに投資額を上積みしていく方針を示した。

・世界は脱炭素化が進んでいるが、アラムコは石油設備にどんどん投資をしていく。
・他方で石油のみならず、天然ガスの生産量も増やしていく。
・水素事業や下流事業にも力を入れていく

サウジアラビアの駐在員として、特に油価が高い現状を踏まえてアラムコは各種案件の前倒し・生産量の拡大を命題と、当面石油設備の拡大というのは続きそうです。

IPO (Initial Public Offering)がどうなったか

残念ながら、サウジアラムコは米国市場では上場銘柄ではありません。2019年12月にサウジ国内で株式を上場しており、上場時の時価総額は約1兆8770億ドル(約200兆円)と、米アップル(約1兆2千億ドル)を上回る世界最大の上場会社になりました。米欧の同業他社と比べて収益力は高い一方で、サウジ政府が支配する企業統治(ガバナンス)に課題が残るとされています。

当時、言われていた問題点はいろいろありますが、サウジリスクとして挙げられたのが「アラムコ自体,財務収益構造・キャッシュフロー等のデューディリジェンス」です。

実際のアラムコの売上キャッシュフローや収益配分の実態については,「アラムコはサウード家の打ち出の小槌,便利な財布」として未開示の部分も多いと云われ,起債より格段に厳しいデューディリジェンスや情報開示に耐えるか疑問視する声も多かったのです。

国営資源企業の情報開示調査(2017年版)で,アラムコは世界の国営資源企業74社中62位(UAE の ADNOC と並び100点中27点,5段階の最低評価グループ)、IPO向けには「説明責任不足で不透明」との厳しい評価を受けています。

実際にアラムコのAnnual Reportは256頁からなっており、早々たる米国上場企業並みのボリュームとなっています。上記の懸念リスクを対外的に打ち消すべく、躍起になっているのかもしれません。

ロイター/WSJの22年2月の記事では、サウジアラビアが国営石油会社サウジアラムコの株式追加上場を計画し、最大500億ドルの株式売却を目指しており、アラムコはリヤド証券取引所での株式追加売却のほか、ロンドンやシンガポール、もしくは他の取引所への重複上場の可能性について外部のアドバイザーと協議しているとの由。追加上場はまだ計画段階だそうですが。

いずれにせよ、今後のアラムコからの動向に目が離せませんね。

以上

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